ブロッキングについて考える④
ブロッキングについてはラストです。児童ポルノの場合、ブロッキングを行っているのは下記リストに記載されている企業に限定されます。
流通防止措置実施事業者一覧 | 児童ポルノブロッキング | 一般社団法人インターネットコンテンツセーフティ協会 - ICSA
プロバイダ(ISP)は56社。上記以外にも日本には沢山のISPは存在します。例えば、日本インターネットプロバイダ協会(JAIPA )という社団法人があります。その会員企業一覧をみると「正会員(153社)」と書かれており、ブロッキング参加企業の3倍近い数のISPが日本には存在していることがわかります。当然、JAIPAに加入していない会社もあるでしょう。ここで疑問が生じるわけです。「ブロッキング参加企業って少なくない?やっても意味なくね?」ということで調べてみました。
MM総研が発表している「ブロードバンド回線事業者の加入件数調査(2019年9月末時点)」をご覧ください。
ブロードバンド回線事業者の加入件数調査(2019年9月末時点) « ニュースリリース | 株式会社MM総研
これで大体のシェアがわかります。まず、FTTH回線事業者シェアをみると、上位5社(NTT東西、KDDI、オプテージ、アルテリア・ネットワークス)で80%以上を占めていることがわかりますが、これら5社はいずれも「流通防止措置実施事業者」です。
また、ISPのシェアでみても、上位8社(NTTコミュニケーションズ、ソフトバンク、NTTぷらら、ビッグローブ、ソニーネットワークコミュニケーションズ、オプテージ、KDDI、ニフティ)は全て「流通防止措置実施事業者」であり、約70%を占めることがわかります。
さらに、固定ブロードバンドシェア(ADSLやCATVなども含めたもの)をみても、やはり上位9社は全て「流通防止措置実施事業者」です。つまり、ISPシェアから考えると、現状のブロッキングは十分に広い範囲をカバーしていることがわかります。
以上の点から、私はICSAが担当業務を拡大するか、あるいは同等の団体を設立し、個人情報流出や拡散事案についてもブロッキング対象判定を行うようになるのが最も効率的かつ適切なのではないかと考えます。そして例えば「個人情報保護委員会にブロッキングの実施をダイレクトにお願いしても、同委員会は「行政」ですから直接動くことができないのです。それは警察も同様です。今の日本では、ブロッキングは通信業界団体の自主的取り組みでなければ実現しません。 法改正で対応する手もあるでしょうが、いずれにしても同じような議論は必要となると思います。
まとめます。
・日本でブロッキングは現在行われているが、それは児童ポルノに限定されている。
・長い議論を経て仕組みが作成されたもの。情報入手から実施まで、全て民間機関による「自主的な取り組み」として行われる。それにより憲法や法律違反による訴訟リスクを回避している。
・方法は「DNSブロッキング方式」で、ドメイン単位で遮断するもの。現時点では一定の効果があるとされているが、回避自体は容易であるうえ、将来的には無効化する可能性が高い。
・海賊版対策(著作権侵害)でもブロッキングを導入するための取り組みが継続しているが、反対意見も多く順調には進んでいない。
・個人情報保護や、誹謗中傷/名誉棄損関連等に関するブロッキング導入に関する議論はまだおそらく進んでおらず、児童ポルノと同様の取り組みを時間をかけて行わないと実現可能性は低い。