2017年総務省「インターネット上に公開された個人に関する情報等の取扱いに関する研究会」資料
総務省の情報通信関連の研究会として「インターネット上に公開された個人に関する情報等の取扱いに関する研究会」が2017年に3回行われていました。
開催目的は「プライバシー侵害情報等インターネット上の個人に関する情報であって本人が公開を望まないものの取扱いについて、事業者、利用者など様々な関係者間で情報共有をより進めるとともに、どのような対応が望ましいかを検討すること」とされています。検討事項として「従来よりも一層迅速な対応の実現に向けた具体的方策の検討」もあがっていました。
この議論は、いわゆる「忘れられる権利」と深く関わる内容になっています。詳細は以下より。
私もまだしっかり読んでいないのですが、例によって事業者へのヒアリングが行われており、貴重な資料がアップされています。はい、GoogleとYahoo!とMicrosoftです。つまりサーチエンジンへのヒアリングです。以下にpdfの直リンクを。
資料中でも触れらているのですが、2017年の最高裁判決の影響はとても大きいものです。ちなみに、東京弁護士会が出している「LIBLA」という雑誌?の2017年10月号に、この判決に関する特集記事があります。とても勉強になりました。ネットでも見ることができますが、二次利用禁止となっているのでリンクは貼りません。興味のある方は検索してみてください。
上記資料の話に戻りますが、例によってYahoo!が一番真摯に回答していまして、かなり参考になるデータ付きで提示しています。9ページ目では、2016年4月~17年10月の間で削除申請されたURL数を公開しており、15349件だそうです。そして実際に削除対応されたのは4079件(26.6%)。3年経った今どうなっているのかは気になりますね。総務省も追加でヒアリングして欲しいところ。
Microsoftは英語で回答してきており、おいここは日本だぞと。それにYahoo!のような具体的な数値等は出していません。Bingの透明性レポートなんかでは色々データ出しているのですが、公開したくなかったのでしょうか。
そしてGoogleですが、資料1枚だけとかニッポンなめんな。しかも半分以上過去の判例(しかも削除を否定するものばかり)並べてるだけ。やる気が感じられませんね。
ちなみにこの資料の下に掲載されている研究会構成員の弁護士さんが作成した資料も読みごたえあるので、読んでみて下さい。「最高裁平成29年1月31日決定」の影響がいかに大きいか、その一端がわかります。たった数年前の最高裁判決ですので、以後の道標的存在になるものと言えます。いくら近年のネット環境の進化変化が急速であったとしても、法律の世界はそんな急には変わらない・変われないと思いますし。
結局のところ、この研究会では冒頭の目的である「従来よりも一層迅速な対応の実現に向けた具体的方策の検討」は十分行われたとは言えません。サーチエンジン側は今も変わらず申請窓口を設けているだけで、どの程度まともな(常識的な)対応をしているのか全く外部からはわかりませんし、個別にはOK/NGの基準(何故削除を承認しないのか)を決して回答しません。この研究会、もう一度復活して議論すべきではないでしょうか。せめて総務省は再度事業者へのヒアリングをしっかり行って、実態をきちんと把握したほうが良いのではないかと考えます。
事業者側も、もっと建前でない、わかりやすくて実例を伴ったガイドラインを作って、ユーザー側に示していくべきだと思います。今のような苦情は自由記述ができない&届くのはテンプレ回答だけ、というシステムでは、ユーザーと事業者の意識間隔はどんどん離れていく一方ではないでしょうか。
ということで総務省へのご意見はこちらからです。