個人情報ほご自治会

インターネット初心者が、ネットに溢れる悪意と戦う為の知恵を共有する場所

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ツイッターで少し触れた件です。あちらではあえてわかりにくいツイートにしましたが、このブログではまずは事実を並べ、言いたいことは後回しにする形で記事にしたいと思います。

 

まず、以下の記事をご覧ください。

登記記載の社長の住所、ネットでは非表示に 法務省方針:朝日新聞デジタル

2018年12月13日の記事です。少し抜粋します。

 

「法務省は一般向けのオンラインサービスでは表示しないよう運用を変える方針を固めた。プライバシー保護の高まりに対応する。一方、訴訟など万一の場合、会社側に連絡を取れるようにするために必要だ、との声が弁護士らからあがっていることに配慮し、法務局での閲覧は従来通り認める方向だ。」

 

「部会での議論を受け、法務省は、プライバシーに一定の保護をするため、簡単に請求できるネット上での表示をとりやめる方針に切り替えた。また、ドメスティックバイオレンスなどの犯罪被害者から申し出があった場合は全面的に記載しない方針だ。来年1月にも結論をまとめ、2~3年後から変更する考えだ。」

 

上記記事にもありますように、法務省は2017年の春から「法制審議会会社法制(企業統治等関係)部会」で登記の一部非公開化の議論を始めていました。そして2019年1月16日の第19回会議にて、予定通り上記方針が附帯決議されました。以下です。

 

http://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900391.html

 

一部コピペします。

 

(2) 電気通信回線による登記情報の提供に関する法律に基づく登記情報の提供においては,株式会社の代表者の住所に関する情報を提供しないものとする。

 

省略しましたがDV被害者への配慮のほうも予定通り決議されてます。ここまで来るのに議論開始から2年近くかかったわけですが、この附帯決議から約1年を経た現時点(2020年2月1日)でもまだ非公開化は行われていませんし、いつから行われるかもまだ発表されていません。

 

ではその閲覧制限の対象となる登記のネット検索サービスとは、一体どういうものなのかですが、「一般財団法人 民事法務協会」が運営している「登記情報提供サービス」のことです。

 

登記情報提供サービス

 

個人の利用も可能で、登録費用は税込300円。決済はクレジットカードのみで審査に1週間程度かかるようです。登録後にIDが郵送されてくるので、国内住所は必須と思われます。また、「一時利用」もあり、こちらは登録不要でクレジットカードの決済が通ればすぐに利用開始できます。

このサービスでは登記を家にいながら閲覧できます。登記には、いろんな個人情報が含まれています。例えば、「商業・法人登記情報」には、会社の住所や成立年月日、資本金や発行株式の数や、役員の名前人数、代表取締役の住所も記載されています(これを嫌って明らかに家ではない場所に住民票を置いている社長さんもいるようです)。

また、「不動産登記情報」には、いつ誰がどうやって取得したのか、過去の取引の履歴が閲覧できます。抵当権が設定されていれば、誰がどこから金利何%でいくら借りたのかも記載されています。

 

ここまでが事実です。以下は個人的に思うことです。

 

前述のように、登記は特定の仕事を行う会社や人にとって必要な情報が記載されているものですが、その一方で情報を悪用する人が出てきてもおかしくない性質のものでもあります。情報流通の利便性が増すにつれて、そういう懸念(及び実害)が多く出ていることが、ネット非公開化の議論の背景にはあると考えられます。

 

そしてこのネット非公開化に反対しているのは誰かという点ですが、冒頭の記事で触れている通り「弁護士」から反対の声があがっているのです。彼らは仕事で登記検索サービスを使っているため、その利便性が損なわれると困るのです。社長の住所がバレようが、知ったことではなく自分達の利益のほうが優先されるというわけです。では「官報」はどうか?官報の検索サービスも、おそらく弁護士は頻繁に利用しています。刑事民事に関わらず、業務上色んな使い方が考えられると思います。官報の個人情報ネット非公開化について弁護士の動きが鈍く感じられるのは、これも理由の一つではないかと私は思っています。彼らは基本職業人であって、決して正義の為だけに仕事をしているわけではありません。味方でもあり敵でもあると言えます。

 

また、次に狙われるのは何か?候補の一つとして登記があると考えます。むしろ官報よりこちらのほうが、情報としてはより高度で大衆の興味を刺激する内容です。幸い既に法人はネット非公開化の実施は決まっていますから将来的な懸念としては小さいのかもしれません。ですが、その前にやられてしまわないか?不動産のほうはネット非公開化しなくて良いのか?抵当権とか大丈夫ですか?等、色んな事を考えてしまいます。前倒しでネット非公開化を急ぎ、その他情報もネット公開方法を見直したほうが良いように思いますが。そしてその流れに官報も沿わせて、ネット公開方法と範囲を見直すべきです。

 

以上、これでもマイルドな表現にしたつもりですが、危険に晒されているのは官報だけではないという話でした。こういうのは登記だけでなく他にもあります。自分には関係ないと思っている人もいつ事件に巻き込まれるかわからないのです。行政には改めて問題点がどこにあるのかを見直して、広い視点から早急に対策を進めて欲しいと考えます。