個人情報ほご自治会

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データを出す人使う人

「交通事故統計情報のオープンデータ」というものが警察庁から公開されているのでその話です。

 

データの中身は例えば「事故の発生日時」「事故の場所」「車両」「死亡事故か否か」「天候」「路面状態」などです。
このデータを有能な方が詳しく解析すれば、交通事故の減少に繋がる成果が得られるかもしれません。

日付だけでなく、「曜日」と「祝日か否か」も別にデータが用意されています。
日付がわかれば曜日や祝日かどうかは簡単に調べられるのに、何故わざわざ追加しているのでしょう。
例えば、平日かどうか=通勤通学で車の流れが全然変わる場所がありますから、
解析が効率化するということで追加しているのだと思います。

 

一方で入っていない情報もあります。

 

事故を起こすのは「人」なのですが、人に関する情報は当事者の「年齢」だけです。
「名前」「住所」はもちろん「職業」「既往歴」「性別」もありません。
警察はこういう情報も所有している筈ですが、公開しないのは何故でしょうか。
大抵の人なら言うまでもなく判ることだと思うのですが、あえて真面目に考えてみます。
(法律論は除外して書きます)

 

ひとつめの理由。
データ公開の目的に照らして「必要ないから」ではないでしょうか。
目的はどこにも書かれてませんが、「データを使って国を豊かにしましょう」からの
「交通事故統計を使って事故を減らしましょう」が公開の目的だと思います。
冒頭で列挙したデータ項目は、事故発生の要因が含まれていると考えられるものです。
しかし事故を起こした人の「名前」と「住所」は、ただの個人情報です。

それらを統計解析しても有益な情報が得られるものではありません。
仮に解析して「ある苗字の人が軽自動車で高速道路を走ると追突しやすい」とか、
「あのマンションに住んでいる人はやたら人身事故に巻き込まれる」とか、
解析結果が出てきたとしても単なるオカルトレベルです。
「芸能人と同じ名前の人は交通事故を起こしやすい!」
「はぁ?交通事故を起こしていない人も芸能人と同じ名前の人沢山いますけど?」ですね。

 

ふたつめの理由。
単純に悪用されるからだと思います。
もし事故の加害者被害者の名前と住所も公開データに入っていたらどうなるでしょう。
「事故加害者を晒そう」という人が出てきてホームページで公開し、「削除して欲しかったら金を払え」と言ってくるかもしれません。
詐欺師が金をだまし取るのに使うかもしれません。
だから個人の特定に繋がる情報は絶対に載せないのだと考えます。


ここで逆に考えてみます。
仮に「交通事故統計情報のオープンデータ」に事故関係者の名前と住所も含まれていたとします。
その場合「交通事故を世の中から減らしたい!」と思った人がやるのは次のどちらでしょう。
 ①交通事故の起こった場所をGoogleマップで可視化
 ②交通事故を起こした人の名前と住所をGoogleマップで可視化


「交通事故を減らしたい」と思っている人の役に立つのは、①と②どちらでしょうか。
悪人の犯罪行為に使われてしまうのは、①と②どちらでしょうか。


こんな感じで整理していくと、色んなことが見えてくるように思います。